2017年4月25日火曜日

「くじらじゃくし」安田夏菜


書名:くじらじゃくし
著者名:安田夏菜
出版社:講談社
好きな場所:「あんた、さっきわいのこと、ただのおたまじゃくしと言いましたやろ。」
「ああ、言うたで。わては、めずらしい生き物をさがしてるんや。どこにでもいる、めずらしくもないおたまじゃくしなんかに、用はないわい。」
「今、めちゃくちゃムッとしましたわ。あんたかて、どこにでもいる、めずらしくもない、ただの丁稚どんとちがいますのんか?」
所在ページ:p34
ひとこと:落語の脚本もお書きになり、花都向日葵という高座名で舞台に上がられることもある安田夏菜さんが、本領発揮して落語風の創作童話を書かれました。2016年に毎日新聞大阪本社版に連載された物語です。
 安田さんの『ケロニャンヌ』も、『レイさんといた夏』も、落語のエッセンスを伴ったユーモアたっぷりの語り口のお話ですし『あしたも、さんかく』は落語家の世界のお話ですが、今回は、もう上方落語の舞台そのもので、「イトはん(お嬢さん)」「だんなさん(店の主人)」「丁稚どん(小僧さん)」が出てきます。お題も「くじらじゃくし」とわかるようなわからないような、なにかおかしなことが始まりそうなわくわくした言葉。
 引用のようにおたまじゃくし、がヒントなのですが。
 こうなるかなと思えば二転三転。おかしなお医者さんも出てきて。
 でも最後はやっぱり児童文学、大きくなるということはどういうことか、ペットを飼うことはどういうことか、考えさせてくれます。
 さすが安田さん、おみごと。
 おあとがよろしいようで。