2017年9月7日木曜日

「オオカミのお札」おおぎやなぎちか

書名:『オオカミのお札』
著者名:おおぎやなぎちか
出版社:くもん出版
好きな場所:今宵、疱瘡神と戦う
所在ページ:第一巻 P32
ひとこと:季節風の仲間、おおぎやなぎちかさんの新刊です。

定点観測という言葉がありますが、この「オオカミのお札」シリーズ三巻は、武蔵国御嶽山のある村にあるオオカミを祀るほこらに関する、江戸末期、戦時下、現代のそれぞれ三つのお話です。

第一巻『カヨが聞いた声』では、江戸末期、村に疱瘡がはやり、妹が疱瘡にかかった村の娘カヨが、妹を助けてくださいと大神(オオカミ)様にお願いする話です。でもカヨは妹の命を助けてくださいとは願いましたが、その他にまがまがしいお願いもくっつけていたのです。妹は助かりましたが……。



第二巻『正次が見た影』は、そのひ孫の世代のふたごの男の子たちの話です。時は、戦争中、おじさんが出征します。ふたごはそれぞれ自分たちもいずれ行くのか、と思いながら過ごしています。ついに大神様も出征なさったことになり……。


第三巻『美咲が感じた光』では、ふたごの一人正次の孫、美咲の話です。美咲は岩手に住んでいましたが、パパとママが離婚したために、東京に戻ってきます。でもじいちゃんは病気になり……そのうち東日本大震災が起きて……。


近代を生きた日本の庶民の姿が描かれています。その中心になるのは、目に見えないものにたいする人間の恐れと、直系の血だけでない一族のつながりです。おおぎやなぎさんのファンタジーの核になるところなのじゃないかなと思います。『しゅるしゅるぱん』もそうでした。

三巻どこから読んでもだいじょうぶにできているということです。三巻読めば、今、現在だけでない、めんめんと営まれてきた人の暮らしを、子どもさんがたにも実感できることでしょう。