2017年9月23日土曜日

「銀座並木座」嵩元友子

書名:銀座並木座 日本映画とともに歩んだ四十五年
著者名:嵩元友子
出版社:鳥影社
好きな場所:もう一度上映する場所があれば、きっとたくさんの人に喜んでもらえるはずだ。せっかくつくった映画を一週間しか上映しないのはもったいない
所在ページ:p20
ひとこと:かつて銀座にあった八十席あまりの映画館「並木座」の生い立ちから閉鎖までをていねいに追ったドキュメンタリーです。
   

 映画全盛のころ、引用のように、ロードショー映画は一週間だけの上映だったとのこと。それを長く見せる場所が必要ということで、印刷所のビルの地下に、東宝のプロデューサー藤本真澄を中心とし、市川崑、小林桂樹、石坂洋次郎、源氏鶏太、石川達三などそうそうたる映画人・文化人を株主としてできたのがこの並木座だということです。オープニングには越路吹雪が歌ったそうです。
 この本には、その経緯のほか、歴代支配人や小林桂樹へのインタビュー、無料で配布されていたプログラムの原寸大の複製、全上演作品リストが掲載されています。
 まとめられるのに8年もかかられたとか、本当に労作といえるものだと思います。
 並木座の歴史として、長く残ってほしい本です。

 そう、私ども学生時代には、ビデオがありませんでした。当然レンタルビデオもなし。古い映画を見るとすれば、金曜ロードショーという番組か、深夜の放送をオンタイムで見るだけ。録画はできませんので、キホン貼り付いていて、CMでトイレに。
 地方から都会に出てきて、名画座というのがあると知って、たいしたものだと驚喜して、友だちとせっせと見てまわったものです。封切り映画が千円ぐらいなのに対して、300円でした。しかも二本立て。そのかわり安いから映画を目的とするのではなくて来ている人……つまり痴漢もいたし、設備も古くて、この本には「蚊が出て」と書いてありますが、私は他の映画館ですがネズミのでかいのを見たこともあります(汗)。ネットもないから、ぴあが頼りで、毎月欠かさず買って、各所の名画座のところにマーカーで印をしていたものでした。あー思いだした。
 その名画座もこの並木座が嚆矢だったのですね。
 巻末のリストを見ると、私は並木座には行かなかったかもしれません。でも友だちのだれかれやうちの家族などは絶対行っていたはず。
 なつかしく思われる方が多いはずの本です。

 著者の嵩元さんは、児童文学作家でもあり、第六回日本新薬子ども文学賞の最優秀物語賞を受賞された方です。受賞作品『ぴっかぴかの いわこちゃん』は、日本新薬のサイトからも読めます。
 http://kodomo-bungaku.jp/library/06/book.html

 ますますのご健筆をお祈りしております!